パンとともにバラを

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賃労働と資本(1) 体験的・古典の修行

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                     ページ数は大月ビギナーズ版

●経済学とは

今回からマルクスの『賃労働と資本』に入ります。次にやる『賃金・価格・利潤』とともに、主として経済について扱った文献です。これらの本の解説に入る前に、経済学とは何かについてお話しましょう。労働組合で活動している友人が次のようにフェイスブックに書き込みました。

私は、「労働」という言葉が好きで、「経済」という言葉が好きではないんです。前者が労働者の誇りを表現するのに対して、後者は、それを利用して金儲けしようとしている置屋のように思います。

むむ、これはと思い、コメント。 

経済は「経世済民(けいせいさいみん)」という言葉を縮めたもの。民を救うのが本当の経済学なのです。ボクは労働も経済も好きよ。労働にしても経済にしても、資本(家)と労働(者)との対立・対抗関係が現実と学問に反映しています。

経済という言葉のそもそも知ったのは高校生のとき。一海知義さんの『漢語の知識』(岩波ジュニア新書)です。

「経済は〝経世済民〟(世の中を治め人民大衆を救う)を略した言葉だと言われています。いかにも儒家の好みそうなことばですが、中国の最もオーソドックスな思想の流派である儒家の基本的な古典(四書五経)には見えないようです。3世紀を過ぎたころから、ようやくいろいろな書物に見え、唐代の詩にも出てきますが、エコノミーという現代ふうの意味で使われた例はありません。古い時代の用例では、すべて〝経世済民〟の意味で使われています」



それが近代になって、ポリティカル・エコノミーの訳語として「経済」があてられるようになったのです。一海さんは、経済ということばの意味は変わったが、経済学をもともとの意味のとおり研究し実践した経済学者に河上肇(1879-1946)がいるといいます。

河上肇は、日本におけるマルクス主義経済学の開拓者の一人。岩国出身ですね。1915年に京都帝国大学教授となり、その翌年、大阪朝日新聞に「貧乏物語」を連載。資本主義社会の生む貧困と害悪を暴露しました。それは人道主義的な見地からの批判で、資本主義社会そのもののしくみを明らかにしたうえでの貧困批判ではなかったのです。しかし、河上は急速にマルクス主義に接近していきます。

『社会問題研究』という個人雑誌を発行し、マルクスの理論を紹介。『資本論』(第1巻)やこれから解説する『賃労働と資本』など翻訳しています。1933年治安維持法違反で検挙されました。河上肇は、試行錯誤のなか、人民大衆を貧困から救うために研究と実践を積み重ねた、その名の通りの「経(世)済(民)」学者なのです。ちなみに井上ひさしさんが、河上肇が拘留中だったときの留守宅を舞台にした「貧乏物語」という戯曲を書いています(『紙屋町さくらホテル』小学館、に収録)。

経済学といっても、さまざまな潮流があります。いま世間を跋扈(ばっこ)しているのは新自由主義の「経済学」です。人民大衆を苦しめ、大企業と大金持ちを擁護する経済学。アベノミクスは「安陪+エコノミクス(経済学)」という造語ですが、新自由主義を主軸にしながら土建「ケインズ主義」的財政支出を加えたもの。「学」らしきところは全くありません。

『賃労働と資本』『賃金・価格・利潤』そして『資本論』の経済学は、経世済民の学問であり、変革のため、世直しのための経済学です。

●庶民の貧困

 ここで、日本の庶民の置かれている状況をいくつかのグラフで確認してみましょう。

まず、相対的貧困率の推移です。

相対的貧困率
相対的貧困率とは、世帯所得をもとに国民一人ひとりの所得を計算して順番に並べ、真ん中の人の所得の半分に満たない人の割合。この指標によると日本では09年時点で、17歳以下の子どもの約16%、320万人以上が貧困状態にあります。一人親世帯の子どもに限ると貧困率は5割を超え、先進国で最悪の水準です。

つぎに非正規雇用の拡大。1990年に20.0%だった非正規雇用者は2013年には全労働者の36.2%を占めるようになっています。
非正規雇用の増大

賃金は低い。「非正規雇用の労働者の給与は、ほぼ全ての世代で正社員の給与を下回っており、年齢による変化も少なくなっています」と厚労省も認めているとおりです。

民間給与も1997年の467万円をピークに、2011年には409万円(グラフにはありませんが2012年は408万円)に下がっています。
民間給与02

自殺者は98年に3万人を超し、15年。この数字には変死者(原因不明)は含まれていませんので実際はもっと多いはずです。首都圏では毎日のように「人身事故」という名の飛び込み自殺が起きています。
j自殺者02
餓死者も1995(平成7)から急増。
餓死者

なぜ、こういうことが起きるのでしょうか。格差と貧困は何によってもたらされるのでしょうか。

この問題を解くカギを与えてくれるのがマルクスの経済学です。

 大内兵衛さん()は、岩波文庫版『貧乏物語』の解説でつぎのように私たちを叱咤しています。

『貧乏物語』の問題は、河上が問いかけただけでは解決しなかった。けれども、〝人類はつねに、自分の解決できる課題だけを提出する〟(マルクス)。しかし諸君!正しく提出された問題なら、解くのは諸君の義務ではないか。(大内兵衛)

さあ、経済学のとびらを開け、問題を解いてみましょう。

※おおうち・ひょうえ1888-1980大月書店版「マルクス=エンゲルス全集」監訳者の一人。元、法政大学総長





















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ふたみ伸吾

Author:ふたみ伸吾
二見伸吾
府中町議会議員(日本共産党)
広島県労働者学習協議会 講師
広島県九条の会ネットワーク 事務局員

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