憲法改正はなぜ三分の二?        (憲法Q&A 3)

Q3.国民の過半数が憲法を変えたいと思った時、国会議員の三分の二以上の賛成が必要だというのはハードルが高すぎます。かえって非民主的ではないでしょうか?

●なぜ三分の二なのか

第一に、憲法改正の手続き(96条)がなぜ厳しくなっているのか、ということです。答えは第98条にあります。憲法は最高法規であり、憲法に反する法律、命令……その他の行為は効力がない。憲法は法律や行政の指針なのです。その指針が法律と同じ要件で変えられるのならば、指針としての意味を失います。だから、三分の二という厳しい要件が課せられているのです。

●憲法は人権保障の指針

では第二に、憲法はどういう指針なのでしょうか。それは、憲法11条が述べているとおり、基本的人権を国民に保障するための指針です。

日本国憲法にはたくさんの人権が規定されています。11条から始まって40条まで、思想・良心の自由(18条)、信教の自由(19条)、集会・結社・表現の自由(21条)、学問の自由(22条)、働くものが労働組合をつくりたたかう権利(28条)、裁判を受ける権利(32条)、拷問や残虐な刑罰の禁止(36条)など、権利と政府(権力)がやってはならないことが列挙されています。

こういう大切な人権が、その時々の多数派によって否定されるようなことがあってはなりません。政権をとるために必要な議席は過半数です。単独で過半数にならなければ連立して過半数を確保します。憲法改正が過半数でいいのならば、憲法は政権与党によって、いつでも簡単に変えられます。

●国民の意思表明とは

第三に考えたいのは、憲法改正についての「国民の意思」はどのようにして表明されるのか、ということです。自民党の改憲案に添えられているQ&Aは、国会での手続きが厳格であることが国民の意思を反映させることの妨げになっている、といいます。

しかし、国民の意思は、選挙における投票、世論や運動のかたちでも表明されます。国民投票だけが国民の意思表示ではありません。

改憲の危機、改憲したい人からみれば「改憲のチャンス」は過去何回かありました。しかし、その都度、国民世論は改憲に反対。改憲勢力は議席を減らして改憲の危機は乗り越えられてきました。

●イエスかノーしか表明できない

もう一つ指摘したいのは、国民投票は、国会が発議した改正案に対する賛否の表明でしかないことです。政権与党のつくった改憲メニューに対してイエスかノーか。改憲案に国民の意思が反映されている保証はどこにもありませんが、政権与党の意思は確実に反映されています。かのリンカーンも民主主義の原則をつぎのように謳いました。

 自民の自民による自民のための改憲。

え、違うかしら…。

リンカーン

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